復活の地 III(小川一水、ハヤカワ文庫JA)

第3巻では来るべき二次震災に備えつつ、第一次震災の復興を描きます。援助の名のもとに外交の駆け引きもあります。そんな中でスミルが美しくたくましく成長していきます。いい読後感。

・・・P88
―まず噂が流れる。帝都に再び災厄が来るという噂だ。だが人々は表立ってはそれを信じない。(中略)しかしそれでも衆議一決した対策というのは取られない。そんな大規模な現象に対して個人個人で考えるのは難しいからだ。買い占めが起こり、小規模な脱出やパニックが起こり、社会はますます不安定になる。(中略)落ち着いてください、冷静に行動してください。そんな無意味な指示だけが流れ、人々は我先に帝都から逃げ出し、逆に無関係な人間が帝都へ押しかける。

・・・P290
・・・一度でもそんな経験をした者が、二度目を避けようとするのは不自然だろうか?不自然どころか自然、当然といっても足りない。それがために都民の五分の一が暮らしを捨てた。
だが―それが防げるものならば、防ぐ力があれば、そうしてやろう、そうせずにおくものか。そんな復讐心にも似た、屈強な心の動きもまた、すべての人が等しく抱いた思いだったのである。三百万もの人々が残ることを選んだのはこの思いのためだった。セイオたち行動者がしたのは、この思いを引き出すことに過ぎなかった。

・・・P300
「みずから希望を打ち消すのは正しい行いかね?―そうしてもなんの得もないのに」

・・・P337
「責任を気にして頼める助っ人を頼まずにおくほうが無責任だろうが!最善の策にこだわって後手に回っては元も子もない。次善、次々善であってもやるしかないのだ!」

・・・P402
「視聴者なんてどうでもよろしい。いま情報をほしがっているのは被災者です」
あなた、どこにみせるつもりなんです、と年配のデスクは穏やかに微笑んだ。

復活の地〈3〉 (ハヤカワ文庫JA)

復活の地〈3〉 (ハヤカワ文庫JA)