平成関東大震災(福井晴敏、講談社文庫)

年末年始の引越しで福井の本は全部売っぱらってしまったので、いざ読みたくなったこの本を読むまでにだいぶかかりました。書店も開くようにはなりましたが、まだ新刊本は入荷しないなぁ。シュタゲの2巻読みてぇ!

ともかく。
福井の小説の中では短くて、以前(2007年の新書)のときはつまらんなぁとか思ったんですが、今読むと役に立ちますし、終盤の熱さが沁みます。
ちなみにこの小説の地震震源が羽田沖約10キロ、深さ20キロ、マグニチュード7.3で、最終的に死者17万人、負傷者111万人の被害を出します。人口密度の高い都会は恐ろしいです。

・・・P74
気が向けば老人には席を譲り、倒れそうになっている人がいれば咄嗟に手を貸してしまう。生き馬の目を抜く社会に身も心も染まりながら、どこかでそんな常識に支えられている日常・・・おれの知る世界。
そう、世界も日常も、地震なんかでは壊れない。壊れかけているのはおれの心だ。人の心が荒れるから世界も荒れるんだ。

・・・P132
たまった疲れが出た、というのとは少し違う。それは言葉にするなら”ぶっちゃけ、これっていつまで続くの? もしかして永遠?”
そういうことだ。肉体ではなく、心が軋み始めたのだ。

・・・P157
「大切なのは、あなたのその腕は人を救えるということです。自分自身も、この世界そのものも。
すべてはあなたの心が決めることなんですよ、サイヤクさん。それが錯覚に過ぎなくても、人間はそうして何度も災厄から立ち直ってきたんです。どんなに大地が身震いしても、人の心だけは壊せない。壊すのはいつだって自分自身・・・ということは、当然、自分の力で直せるはずです」

・・・P170(あとがき)
恐怖は人の思考を硬直させ、笑いは人の情動を活性化する。(中略)地震は「最後の審判」ではない。最初の段階で生き延びることができたなら、生き続けるためにやらなければならないことがごまんと待っている。それをこの世の終わりと捉えるかどうかは、人の心持ち次第だ。