アイの物語(山本弘、角川文庫)

短編7本をオムニバスふうにつなげていき、全体で一つのテーマを形作るという体裁・・・のようです。ヒト、アンドロイド、自我そして感情移入みたいなところでしょう。
序盤。
大きな舞台としては、24世紀の荒廃した東京。ターミネーターのようなロボット支配構造みたいだけど、そんな単純な世界観ではないでしょうなぁ。物語内物語って入れ子構造で感情移入を云々するのだけど、あんまメタ方向には振れないでほしいなぁ。

アイの物語 (角川文庫)

アイの物語 (角川文庫)

以下ねたばれ。

  • 宇宙をぼくの手の上に ・・・近過去、PBEM-RPGスペオペですよ。趣味の世界だなぁ(^^;)。入れ子構造が四重になってる感じか。知り合いをハンドルネームで呼ぶのが珍しかった時代ですな。
  • ときめきの仮想空間 ・・・近未来、没入型VRでガールミーツボーイ。セカンドライフ的な。
  • ミラーガール ・・・近未来、対話型AIとともに育ってうん十年。ストロング・アイって表現は面白いな。
  • ブラックホール・ダイバー ・・・遠未来、銀河辺境のブラックホール観測用AIがガールミーツガール。ここまでで4編か。こりゃ後半のが本命だな。
  • 正義が正義である世界 ・・・アニメの中からリアルを見てる感じ?かと思いつつ、結末が重すぎる。ゼーガペインの世界観とよく似てる。
  • 詩音が来た日 ・・・ここからが書き下ろしで、本気モード。「クラートウ・バラド・ニクト」その他の元ネタが分からん。そうか、認知症というキーワードを引っ張り出すための介護用アンドロイドだったのか。いろんな方面向けの皮肉がけっこうキツいです。おたくと技術者には優しくしてほしいです(^^;)。
  • アイの物語 ・・・表題作で、メインテーマが凝縮されてます。戦闘アンドロイドアイビスはいかに生まれ、なぜに世界を変えたか。アイはAIでIで愛でeyeかなと思ってたけど、iでした(^^;)。もう一周読もう。

・・・読了。
感情移入でヒトとAIを区別するってのは古典的でもありますが、この作品の場合は現実と非現実(フィクション、キャラクター)の相対化、といったほうが適切か。SFばっかり読んでて、ギャルゲーに入れ上げてて、リアル女子こえー(^^;)とか日頃考えてる身からすると、感覚的に「分かる」お話でした。
そういえば最近リアルの出来事で泣いたことないなぁ。トップをねらえ!なら観た回数だけ泣けますが。
脳内漫画家はゆうきまさみでした。鉄腕バーディーな方向で。