鯨の王(藤崎慎吾、文春文庫)

極めて個人的に思うに、惜しい作家のひとりである藤崎慎吾。センス・オブ・ワンダーとか描写力は素晴らしいけど、それだけでは面白いSFにはならないんだなぁと読み終わる度に残念に思うのです。
そんなわけで期待値低めで読み始めるわけですが、しかしやっぱり序盤のワクワク感はものすごい引き込み力。潜水艦の乗員だけを瞬殺するなにか(超音波兵器?)、深海4000メートルに眠る巨大鯨の骨格を巡る陰謀?とか、海洋SFに必要なお膳立てはきっちり。
えらく分厚い本なのでじっくり読んでいきたいところです。
あと、文春文庫はノドの方まで行が詰まってるので、片手で読むには辛いなぁ。
あと、メルヴィルの「白鯨」って、いろんなSFで引用されることが多い気がするので、一度読んでおいた方がいいなぁと。
・・・中盤。
あー、つまんないキャラが出てきたなーと。米海軍の潜水艦長。こーゆー愚かなのに肩書きだけは偉いって手合いがストーリーの主導権握っちゃって、せっかくのクレバーな主人公たちの行動が水の泡になっちゃうケースが散見されるんですよね。クレバーな者どうしの戦いなり共闘なりを見たいなぁ。
・・・読了。
おお、予想をいい意味で裏切って、良い読書でしたよ。

鯨の王 (文春文庫)

鯨の王 (文春文庫)

以下ねたばれ。
艦長もそれなりに有能な男でした。音響的新兵器満載の潜水艦で、昔の東宝特撮怪獣映画のノリで楽しかったです。まぁこの反捕鯨の世相の中、少々殺しすぎな気もしますが(^^;)。
あと、ダイマッコウの水中呼吸のしくみが結局よく分からなかった。LCL?みたいな?