はじまりの歌をさがす旅(川端裕人、角川文庫)

川端裕人さんの本が相次いで文庫化されてるので順次追いかけたいところ。
・・・序盤。
今回は音楽ですか。知識が濃縮されて熟成されて、一見全く関係ない世界につながっていきそうな、そんな予感・期待を冒頭からひしひし感じます。
舞台はオーストラリアの砂漠。馴染みのない土地でアボリジニの伝説・足跡を追う物語。「評議会」とやらがなにを考えてるのか分からないのでやや理不尽な展開ですが、川端さんのこととて見事に収束してくれると期待・安心しながら、揺られていきます。

中盤、以下ねたばれ。
砂漠の旅は中盤で一旦終了。
そこから派生してくる問題が、アボリジニ自治独立、ウラニウムおよび核開発など。半ばファンタジーだった世界がリアルに歩み寄ってきます。

登場人物はいくつかの役割を多重に背負わせれております。
主人公の曽祖父のワジマからして、日本の漁民であり戦前戦後の移民でありアボリジニの一部族をゼロから立ち上げた男であり、核開発を示唆し、アボリジニ自治独立運動の指導者でもありました。主人公はその衣鉢を継ぐ?役目を負わされます。
ヒロインのリサは当初主人公を導くパートナー(ボーイミーツガール要素?)で、アボリジニ文化で白人社会に切り込み、成功したシンガーであり、母でもあると。その他のキャラもアボリジニの伝承、核物理学、法曹界、歌および音楽、キリスト教および西欧文化倫理などなどの要素を持ち込んできます。
・・・読了。
終盤はまたファンタジー寄りになっちゃったかな? 歌が集団催眠とかアッパードラッグとして作用する感覚は理解してるつもりですが(^^;)。

川端作品を読むといつも思うんですが、なにがきっかけで書き始め、取材し、あれとこれとを結び付けたんだろうなぁと。
たぶん当初のきっかけはシドニー五輪なんじゃないかと邪推すると、「銀河のワールドカップ」あたりの流れも汲んでるのかなとか。終盤でタバコの話が(一行程度^^;)出てくるので「ニコチアナ」の取材も活きてる気がするし。